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決算書の限界/問題点

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年商3億円未満の会社のための財務改革 ミライ財務®

こんにちは!

経営コンサルタント・税理士の森です。

今回は、決算書の限界についてお伝えします。

今日の経済環境において、決算書は非常に有益な情報をもたらしてくれます。決算書を元に、銀行は融資判断を行いますし、投資家は投資に値する会社であるのか判断していきます。

しかし、その決算書ですが、他社との比較を行うために一定のルールに基づいて作成されている性質上、自ずと決算書から得られる情報にも限界があります。大切なのは、決算書から分かる事と分からない事は何なのか、社長が税理士任せにするのではなく、自らもしっかりと認識したうえで経営判断に役立てていく事ではないでしょうか(そもそも税理士もそんなに分かっていない場合が多いので・・)。

現在の決算書には下記のような問題点・留意点があります。

1、貨幣価値に表せない情報が表示されない

ブランドの価値・ビックデータの価値・顧客名簿の価値・優秀な社員や経営者の能力など、無形資産と言われるような会社の財産を表現することができません。

というのも、決算書は現時点で貨幣価値に表現できるものだけしか載せることができません。従って、エルメスやロレックスのような莫大な価値を生むブランドやFacebookのような世界最大級のビックデータも貨幣価値に換算できないので決算書には載せられないのです(自己創設のれんの排除)。

ただ、現実社会においては、これらの無形財産は会社に莫大な富をもたらしています。トヨタとFacebook、トヨタの方が工場やら販売店やらをたくさん持っているので決算書は大きいかもしれませんが、時価総額はFacebookの方が2倍以上高いです。世界中の顧客名簿・ビックデータ・優秀な人財に価値があるという証左なのかもしれません。

2、正確な情報とは限らない

粉飾決算という言葉をお聞きになった事があるかもしれませんが、悪気が無くても会計情報が歪んでいることは良くあります。

適当な税理士によるいい加減な決算書の作成・社長が嘘をついている事による会計数値の歪曲・融資を受けたいがため、公共工事を受注したいがための意図的な利益の水増し等々・・

そもそも、正確でない決算書を分析する意味は皆無です。寧ろ誤った経営判断(融資判断・投資判断)をしてしまいます。最近は、税理士以外でもキャッ●フローコーチなど財務コンサルティングを行う人が増えてきました。これはこれでいい事なのですが、そもそも財務分析や改善をする以前に、「決算書が正確なものであるのか?」この大大前提を確認してから財務分析を行いましょう。

3、あくまでも過去の一定の時点をスキャンした静止画である

会社の現金・売掛金・在庫など、経営数値は常に変化しています。あくまでも、決算書は決算期末時点の経営数値の残高を載っているだけです。したがって、銀行等に優良企業として見てもらいたいがために、期末だけ決算セールで在庫を大幅に削減する・手元現金を増やす等の対策を取っても、「アベレージで在庫の量を減らす・常に手許現金をたくさん持てるように工夫する」等の根本的な問題解決を行わない限り、経営は楽になりません。

あと、決算書は1年単位で区切って作成されますが、仕事は1年単位では区切られません。例えば、デベロッパーのリゾート開発のようなプロジェクトでしたら、数年がかりでリゾート施設が完成するのでプロジェクト全体の売上が上がってくるのは数年後です。なので、その決算書が黒字ないしは赤字でも、その会社が本当に儲かっているのか儲かっていないのか一概には判断できないのです。

アパレルなど、ライフサイクルの短い商品を取り扱っている業種は、尚の事実質的な利益の把握が難しくなります。くれぐれも、決算書の数字だけで一喜一憂しないようにしましょう。

4、単に会計入力した数字が集計されているだけなので各構成要素・プロセスに分解できない

売上一つにとって見ても、どこの取引先なのか?何の商品を売ったのか?どこのエリアで売れたのか?どの部署が売ったのか?どの営業担当者が売ったのか?どの媒体(実店舗・EC)で売れたのか?など様々な構成要素があります。

原価はもっと複雑です。材料費は、どの商品をいくつ製造しどのくらいの材料が消費されたのか?標準的な材料の消費量と比べて多かったのか少なかったのか?加工した社員の人件費は、どの製品でどのくらいの時間を使ったのか?勤務時間のうちどのくらいの時間を製造時間として割いていたのか?逆に言えば、手待ちの時間や談笑していた時間、MTGの時間など利益を生んでいない時間はどの程度あったのか?

こういった、構成要素・構成比・内訳・活動状況・業務プロセスが決算書からは全く分かりません。だって、会計入力されたデータを集計しただけですから。決算書からは分かる訳がないのです。

決算書はあくまでも、大枠の要約された情報です。その情報をとっかかりに、各構成要素や業務プロセスに遡って、問題発見・原因究明を行っていく事が必要となるのです。

5、付加価値(利益)を生んでいる部分が分からない

大手の取引先とはいっても利益率の高い取引ができているとは限りません。複数の事業を行っている場合や、複数の店舗・支店を所有しているケースは全ての拠点が利益を生んでいるとは限りません。営業部も自身の人件費と営業コスト以上に稼げている社員とそうでない社員がいるかもしれません。

粗利益が低いのは、材料の仕入れ価格が高いのでしょうか?それとも材料を加工する際の外注費・人件費等の製造コストが掛かり過ぎているのでしょうか?たはまた、そもそも値付けが間違っているのでしょうか?

要約された決算書からでは、自社の付加価値を生み出している、自社の強みとなっている部分が分かりません。仮に黒字決算の申し分ない成績でも油断は禁物です。なぜ現在業績が良いのか?その原因分析を行う事にも価値があります。

6、売上と経費の紐付けができない

利益(損失)とは単に収入と支出の差額でしかありません。なので、全ての経費が売り上げに紐付いていうわけではありません。資産もまたしかりです、収益を生んでいる資産とそうでない資産があると思います。

しかし、繰り返しになりますが、決算書は単に会計入力を集計した表であって利益(損失)はその集計された収益と経費の差額でしかありません。何の経費・資産が収益をもたらしているのか?社長自身で突き止めていく必要があります。

7、時価と乖離している

基本的に決算書は取得原価主義と言って、購入したときの価格で資産計上を行います。従って、購入したときの金額では到底売れない資産(電話加入権等)もあれば、決算書に載っている金額よりもはるかに高い値段で買い取ってくれるような資産もあります(中古の高級車等)。

また、負債の中には未払のリース料・将来的に支払う必要のある未払残業代・訴訟リスク・退職金など、決算書に載ってこない債務もあります。会社には決算書に載っていない財宝が眠っているかもしれませんし、逆に恐ろしい地雷が埋まっているのかもしれません。

8、資金と連動していない

会社の収支と資金繰りは一致しません。例えば、い●なりステーキのように急拡大する会社は、売上は大きく伸びますがその売上げを供給するために人件費・家賃などの固定費が嵩み、その固定費を賄う借入金が嵩み、売り上げても未収になっている売掛金・在庫などの運転資金が増大します。売上が上がるほど、逆に金欠になる現象が起きるのです。

また、材料は大量に仕入れると仕入単価が安くなり利益率は上がりますが、大量に在庫を抱えるので資金繰りが悪くなります。他にも、入金サイトの短い取引先は支払い条件が良い分利益率を下げられてしまう事がありますし、逆に手形払いなど支払い条件が悪い得意先はその分利益率が高い仕事をくれたりします。

資金繰りと利益率はトレードオフの関係になりやすく、なかなか両立させることが難しいのです。

9、変動費・固定費が分かれていないので正確な原価を把握できない

売上の増加に伴って増加する変動費(材料費・外注費・発送代など)と、売上に関係なく発生する固定費(人件費・家賃など)がありますが、決算書ではこれらが分かれていません。変動費であるはずの製造原価の中にも、人件費や家賃などの固定費が含まれています。

実質的な粗利益である「限界利益」がいくらであるのか、決算書とは別の管理書類か決算書を加工して制作することが必要になってきます。

手間はかかりますが、月次では変動費・固定費がキッチリ分かれている変動損益計算書を作成し、決算時に外部提出用のルール通りの決算書に組み替える方法がお勧めです(上場企業も決算書の表示科目と月次試算表の科目は異なっています)。

補足ですが、自社で製品を製造販売するメーカーは人件費=固定費だと決めつけてしまうと危険です。例えば、粗利益5,000円の製品を時給1,000円の人が5時間かけて製造したらどうなりますか?利益が吹っ飛んでしまいますよね。

決算書を深読みできるようになって、数字に強い経営者になりましょう。

ご閲覧ありがとうございました!

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