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創業融資支援業務の3つの注意点

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こんにちは!

経営コンサルタント・税理士の森です。

本日は、創業融資支援の注意点についてお伝えします。

創業融資支援は、夢をかなえようとする創業者の力になることで報酬が得られる、前向きでやりがいのある仕事です。また、「日本政策金融公庫の創業融資」は比較的簡単に借りることができ、それも相まって創業融資支援に興味を持つ士業・コンサルタントは多いもの。

しかし実際に参入し、創業融資支援を何年も継続している士業・コンサルタントは、意外に少数です。

先日ある税理士から紹介で、行政書士Aさんから、創業融資支援事業からの撤退の経緯を聞く機会がありました。成功事例はよく聞きますが、撤退事例ってなかなか目にしませんよね。この貴重な事例から、よくある失敗の理由と、その対策をお話ししましょう。

1.事例:創業融資支援に取り組んだ行政書士

A行政書士は独立開業時、それまで勤めていた司法書士事務所での豊富な経験を活かし、会社設立を中心とした事務所にしようと考えていました。しかし前勤務先ではネット集客の仕組みが完成されており、Aさんは会社設立業務は得意でも、見込み客を獲得する方法を知りませんでした。

開業後は「待つ」時間も多く、アルバイトをしていたそうです。しかしあるとき、前勤務先で会社設立のお手伝いをした事業者から、会社設立を希望する創業者Bさんを紹介されました。大喜びで面談に向かった先でAさんは、B創業者から「創業融資のサポートもしていただけませんか」と相談されたそうです。

Aさんは創業融資に関する知識も経験もほぼありませんでしたが、「ここでNOと言えば、会社設立の案件依頼も消える」と恐れ、「もちろんです」と答えてしまいました。

2.初めての創業融資支援が成功

そこから多数のサイトを見たり関連書籍を購入したりするなどして何とか創業計画書を作成し、日本政策金融公庫に創業融資の申込みへ。融資は、通りました。幸いにも創業者Bさんは自己資金に余裕があり、創業するビジネスの経験も豊富、何よりもすでに固定客を一定程度確保できていたのです。

おそらくBさんは、Aさんの力添えがなくても創業融資を借りることができたはず。しかし一般的に創業者は自分が「貸してもらいやすい人」かどうかわかりませんから、確率を少しでも高めるためにAさんに相談・依頼したのでしょう。創業融資に成功し、会社設立もつつがなく終えて、Aさんは報酬を得ます。そのなかには融資支援に関する報酬も含まれており、もちろん会社設立「だけ」よりはるかに多額でした。この経験からAさんは、気づきます。

A行政書士:「会社設立と創業融資をセットにすれば①相談を受けやすく、それだけ受任しやすくなって②客単価も、より高くなる」ここからAさんは、創業融資支援に真剣に取り組むようになりました。

といってもAさんは「どこに営業しにいくか」「どう営業するか」を知りません。

そこで…。

3.A行政書士の失敗①営業先を知らず、筋を通さず、相手を間違えた

営業先を考えあぐねたAさんは、前の勤務先で会社設立をサポートした顧客に声をかけました。

A行政書士:

「○○司法書士事務所に勤務していたAです。行政書士の資格を取得して、独立しました。今は、創業融資支援と会社設立を、セットで行っています。もしあなたの周りに創業融資を借りたい創業者や、会社設立を考えている事業者がいたら、ぜひご紹介ください」

会社設立よりも創業融資支援のニーズは高かったようで、当時はそれなりの案件を獲得できたとAさんは言います。しかし、これはいけなかった。前の勤務先で出会った顧客に別の営業をかけるなら、せめて元勤務先の司法書士に筋を通すべきでした。

この営業活動が前の司法書士事務所の知ることになり、「弊所顧客のご負担になっては」と、やんわりと以前担当した顧客への訪問を禁止されてしまいました。Aさんの見込み客獲得活動は、暗礁に乗り上げます。

4.A行政書士の失敗②相見積もりで負けないよう単価を下げた

見込み客の獲得が難しくなったAさんに、あるホームページ作成業者から営業メールが入ります。「簡単な1枚もののページを作れば、創業融資の見込み客を集められます」との触れ込みでした。

集客の手段に困っていたAさんがすがったのは言うまでもありません。そこでけっして安くない制作費を投資したのですが、ページに見込み客を引き寄せる導線は作っていませんでした。もちろん問い合わせが入ることはほとんどなかったと、Aさんは振り返ります。

たまに引き合いがあっても、たいていは他の専門家との相見積もり。

より報酬の安い専門家を探して依頼する、「価格重視」の創業者ばかりでした。それでも背に腹は代えられず単価を下げ、Aさんは低価格で創業融資支援を受任するようになります。

しかし「安ければ安いほどいい」と料金でAさんを選んだ顧客はクレームが多く、その対応に時間と手間を割かれて続けてきたアルバイトを辞職。「今が行政書士としての頑張りどきだと思ったんです」とAさんは振り返ります。

Aさんが受けた創業融資相談事例と 結果は以下の通りでした。

(1)信用情報照会を依頼した事例

信用情報照会を依頼したら、「信用情報に傷がつくことはしていない」「自分の言葉が信用できないのか」と言われ…、仕方なく業務を進めて申請したら、金融機関から信用情報に問題があると知らされ融資否決、結局、成功報酬をもらえず

(2)「創業計画書はそちらで絵を描いて作っておいて」と依頼され… その①

事業内容をヒアリングしようすると、「そんなこと考えるのが面倒くさいから頼んでいるのに融通がきかない」と文句を言われて契約に至らず。

(3)「創業計画書はそちらで絵を描いて作っておいて」と依頼され… その前回と同様に「創業計画書はそちらで絵を描いて作っておいて」と依頼され、失注を避けるため、ほんのわずかな話しを聞いただけで、創業計画書を時間かけて作ったが「この創業計画書の内容は自分の考えと違う」「ピンと来ない」と却下され契約に至らず。売上は満足に上がらないうえ、問題の多い相談が多い。Aさんは資金的にも、また精神的にも追い詰められてしまいます。

5.A行政書士の失敗③「どうしても借りられない創業者」を相手にした

また、相談してくる創業者の多くは、「そもそも借りられない人」でした。たとえば自己資金が不十分だったり、信用情報に問題があったり、税金を滞納していたり、創業しようとするビジネスの経験値が少なかったり…。しかし実務知識も経験も乏しいAさんは「来た仕事を何とか成果に」と焦り、難しい創業者の案件も引き受けます。もちろん、結果が伴うことはありませんでした。

融資がおりなければ、融資額に応じた成功報酬も得られません。結果につながらない無駄な仕事を数多くこなしただけ、だったのです。「創業融資を事業の柱にする」と決めてから3年を過ぎたころ、40代に入ったAさんはこの業務から撤退しました。そればかりか、行政書士も廃業。今は、ある税理士事務所で一職員として勤務しています。

「当時は必死で苦しかったけれど、今のキャリアに活きている」と語るAさんは、現在の勤務先でも創業融資のサポート経験をさらに積んでいるとのこと。過去の自分に「チカラを入れるところを間違えている」と言ってやりたい、と笑っていました。

6.創業融資支援から撤退せざるを得なかった理由3点

真面目で熱心だったAさんが創業融資支援から撤退せざるを得なかった理由は、大きく3つ。

① 見込み客を集める仕組みが確立できていなかった

②他の同業者と差別化できなかったため、顧客獲得競争や価格競争に巻き込まれて割の悪い案件しか獲得できなかった

③実務知識不足で相談者の目利きができず、無駄な仕事ばかりになってしまった

これら3点を回避する仕組みを事前に作っておけば、せっかく軌道に乗りかけていた創業融資支援業務を手放すことはなかったでしょう。

創業融資支援は、「(比較的)融資がおりやすく」、さらに「前向きでやりがいのある」業務です。上の3点への準備を行ってから取り組み始めれば、士業・コンサルタントにとって成功しやすい事業だといえるでしょう。

ご閲覧ありがとうございました!

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