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新事業承継税制は使えるのか①

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こんにちは!

経営コンサルタント・税理士の森です。

本日は今年から制度が大幅に変わった、新事業承継税制について個人的な意見を書きます。基本的な制度の内容は、巷に解説書があふれかえっていますので、割愛します。

事業承継の現場で、新事業承継税制が実際に活用されているのか気になるところですが、

私及び私の周りの税理士が携わっている案件の範囲内では、ほとんど活用されていないのが実情です。

理由は、あくまでも納税猶予であり納税が免除されるわけではなく、継続的な経営状況の報告や、組織再編・減資・資本政策などの、経営判断に制限が発生することだと思います。

他にも、安易に代表権や議決権を後継者に譲れないケースも多いです、株式の財産権(所有権)のみ後継者に移して、議決権(経営権)を譲らない「議決権留保型事業承継信託」や「種類株式」の需要があることからも、経営に関する決定権を後継者に承継させていくのが、非常に難しいことだとわかります。

現状では新事業承継税制の適用までには至らないが、特例承継計画のみ提出されている会社が多いようです。

ところで、事業承継税制の活用を検討する際に、よく比較されるスキームがHDを用いた株式承継スキームです。

このスキームは、①後継者がHD設立→②HDに融資を受ける→③HDが先代経営者から事業会社本体の株式を買取るという手順か、①先代経営者がHD設立→②HDに融資を受ける→③HDが先代経営者から事業会社本体の株式を買取る→④退職金を支給するなどして事業会社本体の株価が下がったタイミングで、HDの株式を後継者へ贈与する(相続時精算課税制度を用いることが多いです)といった手順で進めることが多いと思います。

このHDスキームを用いると、HDの株式買取資金の融資は、事業会社本体からの配当か不動産賃貸料などで返済していく形となります。

この時、前者の事業会社からの配当だけで借入金を返済していくと、HDの資産に占める事業会社株式の割合が非常に高くなります。よって、株式保有特定会社に該当してしまい、株価が高くなるケースが多いです。ただし、HDは純粋持株会社ですので事業承継税制の適用が可能になります(細かい要件はいろいろありますが)。

事業会社からの配当に加えて、後者の不動産賃貸料もセットで借入金を返済すると、HDは事業会社株式だけでなく不動産も所有することになりますので、HDの資産に占める事業会社株式の割合が低下します。その結果、事業会社株式の総資産に占める割合が50%未満になれば、HDは株式保有特定会社に該当せず、比較的安い株価でHD株式の評価を行うことができます。ただし、この場合はHDの総資産に占める不動産の価格が70%以上になってしまったり、HDの総収入に占める不動産賃貸料の割合が75%以上になってしまうと、事業承継税制の適用を受けられなくなってしまいます。よって、財産構成・収支の内訳ともにかなり気を使っていかなければいけません。

以上のように、HDスキームと事業承継税制を組み合わせると、①株価が上がってしまう②事業承継税制の適用が受けられなくなる等の弊害があり、なかなかうまくいかないのです。なので、現実的には事業承継税制かHDスキームのいずれか一方を選択するのが現実的ではないでしょうか。

次回に続きます。

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