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賃借契約している店舗に潜む罠

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年商3億円未満の会社のための財務改革 ミライ財務®

こんにちは!

経営コンサルタント・税理士の森です。

今回は賃借契約している店舗が、含み損を抱えているかもしれないケースについてお話しします。

会社買収の際や、自社の財務分析の際に活用して頂けると思います。

最近「持たざる経営」という言葉が、頻繁に雑誌や専門書に出てきています。

「持たざる経営」という言葉が一般的に使用されている事実からも分かるように、近年は自社で店舗や人員を所有せず、賃貸や非正規雇用の労働者等で経営資源を調達している会社が増えています。

この持たざる経営の中で、小売業などが自社で店舗を所有せず、店舗を賃借して使用しているケースがあります。

このケースの一般的な会計処理は、自社で固定資産を所有しないため貸借対照表に店舗が資産計上されることはなく、損益計算書に家賃が「賃借料」として計上されるのみです。その結果、決算書だけ見ると、資産を自社保有しないためリスクの低い経営ができているように見えます。

ところが、実体は下記の事例のようなケースもあるかもしれないのです!

貴社が下記の会社の買収を検討していると思ってご覧ください。

(買収候補の日用品の小売業を営んでいるA社)

・コンサルティング会社が収益力・内部留保等から算出した企業価値は7億円

・内部留保(純資産の部)の金額 9億円

・A社はインターネットでの通販の他に、都内に4店舗お店がある

・店舗は全て賃借しており、賃料は4店舗合計で年間7.5億円

・A社を買収した後に、自社の商品を4店舗で販売した場合のキャッシュフロー(家賃差引前)は年間2.5億円

・4店舗の資産価値は合計で70億円

・4店舗ともあと10年程度使用可能

単純に見ると、企業の価値は7億円に対して内部留保は9億円ありますので、割安で買収できるように見えます。

また、店舗も残り10年程度使用可能で年間賃料7,5億円ですので、資産価値70億円と比較しても極端に割高な賃料とは言えないでしょう。

ところで、賃借している4店舗の所有者は、建物の謄本を見るとリース会社になっています。

店舗の構造はいずれもA社のビジネススタイルに合わせた特殊な仕様になっており、賃借契約を途中解約することができません。どうしても解約したい場合は、解約時の時価で買い取らなければいけない契約です。

つまり、A社は実質的に4店舗を購入しているも同然なのです(専門用語でファイナンスリース取引と呼びます)。

A社の決算書には4店舗の賃借料しか載っておらず、貸借対照表に計上されている資産・負債はありません。

そこで正しい会計処理に直すと、A社は4店舗80億円程度をリース資産・リース債務として貸借対照表に計上しなければいけません。

更に、この4店舗は10年間で25億円しかキャッシュフローがありませんので、70億円の資産価値はあっても自社で使用する場合は約25億円しか価値がありません(2.5億円×10年)。

こう考えると、A社は実際のところ36億円の債務超過であるとも考えられるのです(内部留保9億円+店舗の価値25億円-リース債務70億円)。

A社には45億円もの多額の含み損(減損損失)があるかもしれないのです。

この要因だけで買収の意思決定が変わるのかはケースバイケースなのでしょうが、ただの店舗の賃借取引の中に、これだけの含み損が潜んでいることもあるのです、、恐ろしいですね。

ご閲覧ありがとうございました!

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