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こんにちは!
経営コンサルタント・税理士の森です。
本日は、創業者向け信用保証制度についてお伝えします。
「経営者保証」不要で3,500万円まで借りられる、創業者向け信用保証制度「スタートアップ創出促進保証」をご存じですか?1年前の2023年3月15日から始まった本制度は、「創業融資なら公庫一択、実績重視の民間金融機関からは難しい」との固定観念をひっくり返す信用保証制度です。
では、その内容、利用条件、また公庫の「新創業融資制度」との比較を見ていきましょう。
1.スタートアップ創出促進保証について
スタートアップ創出促進保証について、中小企業庁のページにはこうあります。
「スタートアップを含む起業家・創業者の育成は、日本経済のダイナミズムと成長を促し、社会的課題を解決する鍵でありますが、失敗時のリスクが大きいために起業することをためらう起業関心層の方のうち、およそ8割が「借金や個人保証を抱えること」を懸念されています。
そのため、こうした懸念を取り除き、創業機運の醸成ひいては起業・創業の促進につながるように、経営者保証を不要とする創業時の新しい信用保証制度としてスタートアップ創出促進保証制度を創設します。」
できるだけ起業リスクを軽減することで、創業を強く後押ししたい政府の本気が見えますね。また同時に、もちろん公庫に加えて民間金融機関にも、一人ひとりの創業を応援してもらいたい狙いもあるでしょう。
どうしても民間金融機関は実績を重視しがちで、新しい事業者に対しては渋い姿勢を取るものです。しかし政府は民間金融機関にもこのような制度で、創業支援への道を整えているのだと私はとらえました。
2.スタートアップ創出促進保証制度の概要
スタートアップ創出促進保証制度の概要は以下の通りです。
<保証対象者>
●創業予定者(これから法人を設立し、事業を開始する具体的な計画がある者)
●分社化予定者(中小企業にあたる会社で事業を継続しつつ、新たに会社を設立する具体的な計画がある者)
●創業後5年未満の法人
●分社化後5年未満の法人
●創業後5年未満の法人成り企業
<保証限度額>
3,500万円
<保証期間>
10年以内(据置期間1年以内)
<金利>
金融機関所定
<保証料率>
各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せした保証料率
<担保・保証人>
不要
<その他>
●創業計画書(スタートアップ創出促進保証制度用)の提出が必要。
●保証申込受付時点において税務申告1期未終了の創業者にあっては創業資金総額の1/10以上の自己資金を有していることを要する。
●本制度による信用保証付融資を受けた方は、原則として会社を設立して3年目および5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づいた確認および助言を受けることを要する。
3.日本政策金融公庫「新創業融資制度」との比較
日本政策金融公庫には、担保・保証人不要の創業融資制度として「新創業融資制度」があります。「新創業融資制度」と「スタートアップ創出促進保証制度」のおもな違いは、以下のとおりです。
<対象者>
【新創業融資制度】
●新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方
【スタートアップ創出促進保証制度】
●創業予定者
●分社化予定者
●創業後5年未満の法人
●分社化後5年未満の法人
●創業後5年未満の法人成り企業
<融資限度額>
【新創業融資制度】 3,000万円
【スタートアップ創出促進保証制度】 3,500万円
<自己資金額>
【新創業融資制度】
事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金
【スタートアップ創出促進保証制度】
税務申告1期未終了の創業者にあっては創業資金総額の1/10以上の自己資金
<担保・保証人>
【新創業融資制度】 原則不要 ※代表者が連帯保証人となる場合は利率が-0.1%
【スタートアップ創出促進保証制度】
不要 ※各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に+0.2%
<その他>
【新創業融資制度】
特になし
【スタートアップ創出促進保証制度】
会社を設立して3年目および5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」(後日掲載予定)に基づいた確認および助言を受けることを要する。
4.新創業融資制度との違い=創業後5年未満の法人も利用できる
個人的に、これは小さくないメリットだと思いました。公庫の新創業融資制度は実質的に創業2期目までがリミットですが、スタートアップ創出促進保証制度は実質的に5年目まで利用できます。もちろん決算書の内容にもよりますが、わずか5年目でも
「経営者保証なし」「3,500万円まで」の融資への道筋が見えるのはありがたいでしょう。
一方、民間金融機関としても、3期分以上の決算書を見たうえで融資判断できるのは現状の融資審査と変わりなく、現場での大きな混乱も避けられそうです。
5.新創業融資制度との最大の違いは「ガバナンス体制の整備に関するチェック」
一見、「新創業融資制度」と「スタートアップ創出促進保証制度」には大きな差がないように見えます。最大の違いは、「スタートアップ創出促進保証制度」には、「ガバナンス(企業統治)体制の整備に関するチェックを受けることが必要」だということです。
「スタートアップ創出促進保証制度」により融資を受けた後、会社を設立して3年目及び5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づく確認および助言を受けることになります。
この融資を受けた中小企業者は、会社を設立して3年目及び5年目中に中小企業活性化協議会に、自分から連絡し、窓口相談(収益力改善への取組みの必要性確認およびガバナンスチェック)を実施してもらう必要があります。
その際、「経営の透明性確保」、「法人・個人の資産分離」「財務基盤の強化」について、中小企業活性化協議会が確認や助言を行います。また、チェック結果の写しを、金融機関に提出するよう記載されています。
6.「ガバナンス体制の整備に関するチェック」をしないとどんなペナルティが
3年目及び5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェック」を行わなかった場合のペナルティを、2024年2月20日に中小企業庁に問い合わせました。回答は…中小企業庁担当者「今のところチェックを行わなかったことに対するペナルティはありません」今後もちろん変更される可能性はありますが、少なくとも今のところは「残債の一括返済」や「保証料が上がる」とかいうことはないようです。しかしチェックを受けておかないと信用保証協会や金融機関の印象が悪くなり、その後の融資に悪影響を与える可能性は十分あり得るでしょう。
創業促進のため、創業融資については、このように新制度が創設されることがよくあります。またもちろん既存制度の変更もあり、同じ制度でも1年も経つと内容が変わっていることが少なくありません。さらに景気動向や金融庁の監督指針の変更により、貸す側である金融機関の融資スタンスも頻繁に変わります。
確実に創業融資を受けられる支援を目指す士業・コンサルタントは、創業融資に関する最新の情報を把握しておきたいものです。
ご閲覧ありがとうございました!
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